どうも@akirasiraです。
日本が世界に誇る企業と言えばどこを思い浮かべるでしょうか。
ここ最近の日本は元気がなく、GDPも中国に抜かれて世界三位となっています。
そんな日本産業ですが、電機、機械、エレクトロニクスが没落した今、自動車産業が日本経済最後の砦とも言われています。
そんな自動車産業のトップと言えば”トヨタ”です。
どこまでが真実か?巨大自動車企業を書いた小説
今日紹介する本は梶山三郎著の”トヨトミの野望”です。
トヨトミという会社のお話で、この会社は名古屋に本社がある日本の自動車メーカーです。
様々な子会社もあり、市の名前もトヨトミ市となっています。
つまりこれは”トヨタ”を題材にした小説ということです。
創業家vsサラリーマン
サラリーマン社長である「武田 剛平」からこの物語は始まります。
武田はトヨトミの初となる”創業家意外のサラリーマン社長”です。
破天荒な性格から一時は海外に飛ばされていましたが、そこから社長まで成り上がった”スーパーマン”です。
対する創業家は「豊臣 統一」。
彼は初代社長の孫で、現会長の長男という純血の男です。
能力としては平凡だと自分では理解していますが、周りの目はトヨトミ家の正当な後継者として見られるという運命です。
この2人を中心に物語は進みます。
そしてこの小説の一番おもしろいところが、実話に沿った内容がふんだんに盛り込まれているということ。
このことにより、「どこまでがフィクションでどこからが真実なのか?」と考えながら読み進めることとなります。
ALSの研究支援のために、氷水を頭からかぶる”アイスバケツチャレンジ”が世界規模で流行したが、統一も参加して氷水をかぶり、やんやの喝采を浴びた。
その際、ALSに斃れた側近役員の遺影は背後に飾ったものの、宿敵明智の遺影はなかった。
という一文が出てきます。
宿敵明智というのはサラリーマン社長である武田派の人間のことです。
実際にトヨタの豊田章男社長がアイスバケツチャレンジをしている動画がありました。
遺影は一つですね。
こういうところから、どこまでが本当のことを書いているんだ!?という妄想にかりたてられるにです。
創業家を中心とした一種の宗教的観念
この話しの中で武田はかなりのやり手という評価、一方創業家は過去の栄光を引きずっているという良くない評価で書かれています。
武田としては、トヨトミをグローバル企業に成長させるも創業家の思惑からは抜け出せない葛藤が描かれています。
実際会長の一声で社長交代となっています。
一方で、豊臣の初代社長の孫で本家の血筋を継いでいる豊臣統一。
彼もまた豊臣家の血筋に感謝しながらも自分の運命を呪っているのです。
武田というスーパーマンと比較されることを恐れ、自分の周りにはイエスマンを固めてしまうのです。
その結果アメリカで大きな事故が起こるのです。
統一が見せた弱み、そして成長
アメリカでの事故を受けて、公聴会を行います。
ここで統一は今まで見せられなかった弱みを見せることとなりました。
本家の血筋があるからこそ、ずっと孤独で弱みを見せることができなかった統一。
アメリカでの公聴会では全てのクレームに対して真摯に受け止めるということをやりきりました。
そして、自分は1人ではないことに気づくのです。
自動車産業のこれまでとこれから
この小説は自動車産業のこれまでとこれからが描かれています。
アメリカでのZEV(排ガス0車)の問題を取り上げています。
トヨタが一斉を風靡したハイブリッドカーの”プリウス”がアメリカの自動車産業を駆逐した結果、環境問題を傘に日本の自動車産業を潰そうとしています。
そういったこれからの未来ついても書かれており、またその背景にはロビイストの存在についても描かれているのです。
テスラやGoogleも出てきますし、水素車が流行らない理由などにも触れられています。
まとめ
作者は覆面作家である”梶山三郎”氏。
どこまでが本当かはわかりませんが、かなりリアリティのある話で内部の事情に精通していないと書けない内容になっています。
とてもおもしろく、続編も出ているので今度買って読んでみようと思います。
この本を通じ感じたことは「どこにでも差別や偏見はある」ということ。
国や血筋など綺麗事だけではないドロドロとした世界が、実際にあるのだなと思い知らされました。
どこまでがフィクションなのか関係なく、とてもおもしろい内容の小説です。
久々に一気読みするくらいハマりました。
一読をおすすめします。